空き家をチャンスに!は必見の連載ですよ

空き家をチャンスに!:「縮小都市」ライプツィヒに学ぶ「使用価値」視点の空き家再生  大谷 悠

これは必見の連載です。ドイツ・ライプチヒは基幹産業の空洞化とそれに伴う人口減少により空き家率が上昇し,都市としての危機に直面しているようです。

2004年秋、衰退にあえぐライプツィヒの一地区であったリンデナウで「ハウスハルテン」が設立されました。地元の住民団体「リンデナウ地区協会」のメンバーが中心となり、有志の市民、行政職員、建築家らが立ち上げに参加しました。

「ハウスハルテン」の最大の特徴は、空間を誰かに使ってもらうことで最低限のメンテナンスをしてもらうという「使用による保全」をコンセプトとしていることです。2005年に始まった「家守の家」は、通常5~10年の期限付きで空き家の暫定利用を促す「ハウスハルテン」を代表するプログラムです。

所有者は、使用者に居てもらうことで建物の維持管理費を免れ、さらに自己負担なしで建物の最低限のメンテナンスと建物への破壊行為を未然に防ぐことができます。一方使用者である「家守」は、原則家賃負担なしで、自分たちの活動や生活に使える自由な空間を得ることができます。このように、「家守の家」は所有者と使用者の双方にメリットのあるプログラムなのです。

ハウスハルテンは公益法人(登記社団)です。立ち上げ当初は市から補助金を受けていましたが、現在では使用者が毎月払う寄付金によって独立採算で運営されています。メンバーは約20人で、そのうち2人が職員でオフィスに常駐しています。他のメンバーは住民団体、建築家、都市計画家、市の職員など様々な職能を持つ人々です。

この方法は,買い取りでもなく,賃貸でもない,無償での使用によるものですね。空き家を利用する方法を考えるに際しては,何に使用するかという目的・用途について検討しなければならないのと共に,どうやって利用するかという法的・費用的な側面も無視できません。ハウスハルテンの例は後者について考えるに際して参考になると思われます。

 ただ,この方法には問題点もあるようです。

空き家をチャンスに!:サポートによって空き家に新たな価値が生まれる

一方、「ハウスハルテン」は新たな課題を抱えています。2000年を境にライプツィヒは人口が増加し始めました。住環境が改善され、若者文化が育ちつつあることが要因となって、若者や子育て世代が増えていて、ちょっとしたベビーブームが起こっています。

これは歓迎するべき事態ではありますが、いくつかの地区では不動産投機が始まり家賃が上昇しつつあります。「ハウスハルテン」の取り組みは、いわば不動産市場が破綻していたからこそ建物の「使用価値」によって所有者と使用者のwin-winの関係を築くことが出来ていました。

しかし「普通の不動産市場」が育ちつつある現在、空き家の所有者が利益の見込めない「ハウスハルテン」に物件を預けるインセンティブが働きづらくなっています。

近年では「ハウスハルテン」の暫定利用期間が過ぎた後、所有者が家賃を大幅に上げるため、それまでの使用者たちのほとんどが追い出されています。ある意味、ハウスハルテンの活動が上手く行っているがゆえに地域の不動産価値が上昇し、当の価値を産んだ若者たちが追い出されてしまっているのです。

 無償での使用を継続していくのは確かに困難な側面もあるでしょう。

そこで,こんな取り組みも行われているようです。

このような皮肉な状況の中、新規事業者にチャンスを与える「自由な空間」をいかに維持していけるのかということが課題となっています。その一つの試みとして、「ハウスハルテン」は2012年から「改築ハウス」というプログラムを行っています。

これは空き家の家主が住民たちにセルフリノベーションを委託する代わりに、建物を格安の家賃で貸し出すというプログラムです。

やはり建物使用の対価は払うという方法が,施設の維持のためには必要なんでしょう。

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