『そもそもなんで「メイクビレッジ」なの?』その2『そもそもなんで「メイクビレッジ」なの?』その2

〜「村」=「繋がり」〜

 

 突然ですが,かつて農村の貧困の問題を研究し,農務官僚として農村の貧困化対策に当たった柳田国男(民俗学者,詩人,官僚,1875−1962)は「人と人との関係の貧しさ」を「孤立貧」と呼び,生産における「協同自助」,つまり農村社会の協同団結に拠る以外に「孤立貧」には光明を得ることができないと主張していました。

 みなさんは「村」というと「農村」「農業」とか「過疎」というイメージがありますよね。しかし,実際,昔の「村」は決して農業だけではなかったのです。商業も工業も金融も,今の都市にあるものはすべて揃っていました。そこには,複数の人や産業の繋がりがあったのです。
 しかし,ある時から地方の村は農業が奨励されます。いわゆる富国強兵ですね。そうすると村は農業に特化し,村から商業・工業・金融,そして人が都市に流失していきます。そして,様々な繋がりから残され,切り離された農村は徐々に衰退していくようになったのです。

 これを私たちに例えてみましょう。そして,シングルマザーが置かれている状況に例えてみましょう。

 シングルマザーの貧困ということが言われていますよね。これは私が実際に見てきた事例でも,統計でも否定しがたい事実です。しかし,シングルマザーの方々が働いていないのかというと日本ではそんなことはありません。むしろ,就業率は突出して高いのです。ではどうして貧困にまで追いやられてしまうかというと,単純に長時間労働などができない子育て中の女性は賃金を低く押さえられてしまっていることが主な原因となっています。

 また,「時間貧困」の問題も大きく影響してきています。「時間貧困」というのは,育児,仕事に時間を取られて,自分の時間が全く取れない状況をいいます。つまり,何もかもに追われて,他に何もできなくなってしまっているのです。

 そうすると,給料を得て生活をしていくために頑張っているのに,仕事や育児に追われ,自分の時間が全く無く,人との繋がりが希薄になっていくことが予想されます。この「人と人との関係の貧しさ」=「孤立貧」がどんどんシングルマザーの方々の生活を追い詰めていく原因になっているのです。

 このような人たちに「変われ」「努力しろ」と言っても,それは無理な注文です。逆に追い詰めていくことになってしまいます。

 そこで,私たちは,シングルマザーの方々が,生活しているだけで他者と繋がりができる居場所を開設することとしました。ここでは,生活のなかで自然と多様な人との交流ができるだけでなく,育児の手助けをしてくれる周囲の人達に囲まれているので,「時間貧困」を少しでも解消できることでしょう。
 そして,そのまた周囲には,自分自身の力で仕事を立ち上げ,収入を得ている人たちがいます。そうすると,単に会社に雇用される以外の生き方を自然と体感することができます。

 これは,明治時代以前の「村」の姿ではないでしょうか?農業・商業・工業・金融が混合し,多様な人の出入りのあった豊かな村の生活の姿ではないでしょうか?

 「孤立貧」は人との繋がりの多様性からしか解消することはできません。自分とは異なる人との交流が経済的な貧困から脱却するきっかけとなるのです。

 こういう「変化のための村=ビレッジづくり」をしようというのが,メイクビレッジの理念であり,その名称の意味なのです。

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