居住スペースとワークスペースが混在している理由

皆さんが思う疑問のひとつに「メイクビレッジ1号館は,どうして居住スペースとフリーランスのワークスペースが一緒になっているの?」というものがあると思います。単純にシングルマザー専用住宅を作ればいいじゃないとお思いでしょう。この点について今後も何度かご説明していきますが,まずは簡単にその理由をお話してみたいと思います(ちょっと長い文章なので我慢してお付き合い下さい)。

シングルマザー世帯,いわゆる母子家庭世帯の収入は,児童手当・児童扶養手当及び養育費等を含めても平均年間223万円(就労収入に限れば年間181万円)となっています。これは,一般世帯の収入と比較して36%の収入(就労収益では29%)を得ているに過ぎない状態です。 このため,ひとり親世帯の相対的貧困率(ある国や地域において,生活水準が他と比べて低い層又は個人が全人口に占める比率)率は54.6%と高い水準を示しています(2012年厚生労働省調査)。

この原因としては,日本の就業環境が,いわゆるメンバーシップ型の「就社」を中心としていることが挙げられるでしょう。日本では,会社に正社員として就職するためには長時間労働や転勤が可能でなければならず,そのような条件に合致しない人はどうしてもパートやアルバイト,及び派遣労働に従事せざるを得なくなってしまいます。

このため,長時間労働ができずらい,子育て中の女性が正社員として安定した地位・収入を得ることは現実的にはなかなか難しいのではないでしょうか。仮に正社員として勤務することが可能であっても,自分の時間を犠牲にせざるを得なくなり,余裕のない生活を強いられてしまっているようにも思います。

もちろん,正社員として勤務することがベストなのだというつもりはありません。パートやアルバイト,派遣労働などのいわゆる非正規雇用であっても,十分な収入が得られれば何も問題はありません。しかし,残念ながら上記の雇用形態だとどうしても低収入を強いられているのが現状ではないでしょうか。

また,日本の会社では,会社の仕事は社員がするものという意識が高いので,1日数時間は働けるけど長時間勤務は難しいという潜在的な能力を持っている人たちを十分に活用できない状況にあるように考えます。最近は技術の進歩に伴い,テレワーク等を活用して,「自分の時間に合ったワークスタイル」を選択できる可能性が大きくなってきましたが,まだまだ端緒という段階のように思います。

そこで,メイクビレッジでは,このような子育て中の女性が持っている「潜在的な能力」を十分に発揮できるような環境づくりを進めて行きたいと考えています。具体的には,人手不足やアウトソーシングをしたいと考えている企業と潜在的な能力を持っているけれどもフルタイムでは働けないという女性のマッチング,長時間労働という就業スタイルが生産性を阻害しているのでワークスタイルを変えて行きませんかというコンサルティングなどを予定しています。

ただ,上記の取り組みは一朝一夕にはできません。長い時間がかかるでしょう。そこで,まず,メイクビレッジではシングルマザーの方々とフリーランスで働かれる方が身近に接する環境を整えることで,シングルマザーの方々に雇用形態とは別の働きかたのロールモデルを体感して欲しいと考えています。1階にある食堂・カフェではシングルマザーの方々とフリーランスや起業をしている方々が日常的に接することが可能です。その中で,シングルマザーの方々には雇用されるだけが収入を得る道ではないということを実感していただくことができると思いますし,フリーランスの方々も他者の視点から自分の事業を再確認してもらえる可能性もあるのではないかと考えています。もしかしたら相互の交流で新たなビジネスが生まれる可能性もあるかもしれません。

以上のとおり,私たちはメイクビレッジを単なる住居提供のための活動にしたくないという気持ちがあります。シングルマザーの方々が持っている潜在的な能力や可能性が発揮できるような環境を作りたいという想いを持って,メイクビレッジ1号館を開設したいと考えています。

これからも折にふれて,様々な角度から上記の私達の「想い」をお伝えしていきたいと考えております。忌憚のないご意見やご感想をいただけるとうれしいです。

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